半透明の欲望

BLゲームの感想メインに徒然綴る。

咎狗の血 感想

一気に走り抜けました!咎狗の血

もともと「ボブゲ界の伝説」と聞いていたので勢い込んでプレイしたのですが、確かに2005年発売とは思えぬ完成度でした。作りこまれた世界観、美麗スチル(ほんと綺麗で魅入る)、豪華声優陣、上品なBGM……

そして何よりシキ様がかっこいい!咎狗未プレイの淑女各位にむけて、シキ様のために購入しましょうと叫びたいくらいです。

あ~ほんと、かっこよかった。(詳しくは後述します)

 

 

■ストーリー

舞台は第三次世界大戦後の日本。

日本は左右に分断され、かつての首都・トシマ(旧トウキョウ)は戦火にさらされて荒廃し、麻薬犯罪組織ヴィスキオの統治下で無法地帯となっていた。

主人公アキラはストリートファイトの強者であることから、なかば脅しに近い形でトシマに送り込まれ、ヴィスキオのトップ・王(イル・レ)を倒すことを命じられる。アキラは自らの命をかけて、ヴィスキオが執り行っているゲーム「イグラ」で勝ち残り、王への挑戦権を得なければならない……。

 

というストーリーなんですが、厨二感がすごい。世界観に馴染むまでちょっと時間がかかりました。

でもちゃんと細部まで作りこまれているので、噛むほどおいしい!ってやつかも。

 

以下、ネタバレてんこもりです。

 

 

 

 

 

 

■アキラ

初期アキラには殺人に快楽を覚えそうな危うさがあったので、私はてっきり「サイコパス主人公が倒錯した性にのまれていく」的BLかと思ったんですが、全然違いました。(それはそれでおいしいけど)

この物語は、いわばアキラの成長譚なんですね。「生にも死にも意味なんてない」とどこか諦めていたアキラが、人を信じ、愛し、生に意味を見出すまでを描いたストーリー。誰一人寄せ付けない一匹狼だったアキラが、次第に周囲へ心をひらき、誰かを守りたいと願うさまには愛しさすら感じます。

これはツイッターでもちょっとつぶやいたんですが、これまで誰とも深くかかわってこなかったアキラは、人間関係構築スキルがゼロなんです。いわばベビー、世界を知らぬまっさらな赤ちゃん。もちろん恋愛のれの字も知らないヒヨッコです。

だからこそ彼は、はじめて抱いた誰かへの愛情を素直に受け止めます。「愛」を友情とか恋情とかいう既存の型に押し込めず、「この人のそばにいるのが心地いい」「この人が愛おしい」って気持ちをそのまんま認識している。だからBLも自然に成り立つのかな、と思いました。

 

アキラは作中でも顔がいい設定なんですが、ほんとに顔がいい。パッケージのアキラとかもはや芸術の域じゃないですか?顔がいい……。

あと声がいい。もともと先割れスプーンさんは大好きなんですが、咎狗やってさらに好きになりました。甘さと渋さのブレンド具合がじんわり耳に染みゆきます……。

 

 

■ケイスケ

いやお前誰だよ!!!!!

って叫びたくなったキャラクターNo.1、それがケイスケです。いや、豹変しすぎでしょう。お前誰だよ。

最初はあまちゃん幼馴染だと思っていたので、ずっとイライラしていました。いやなんのためについてきたんだよ、帰れよ、って。でも覚醒後のケイスケはぶっとんでて割と好きでした。幼少期から恋焦がれてた相手に殺意むき出しってアンタ……。こじらせすぎ。なんか腸とか引っ張り出してるし。

ぶっとびすぎてケイスケルート以外では必ず死ぬのがちょっと不憫でした。でも彼が死ぬことでアキラは大きく成長するし、きっとアキラの胸から幼馴染を失った痛みが消えることはないので、無駄な死ではないのだと思います。

 

ケイスケの二面性に関連して、これはきっと百億万回は言われてると思うのですが、ケイスケの声を担当されている何武者さんがすごすぎました。彼のすごさはもともと知ってたんですが、改めて思い知らされた気分です。ケイスケ(気弱)とケイスケ(鬼畜)の温度差には思わず笑っちゃいました。

 

 

■リン

兄であるシキの謀略によりチームの仲間を殺され、生き残ったメンバーに裏切り者の烙印を押されたリン。憧れていた兄に陥れられ、大切なものをすべて奪われ、人を信じることに憶病になってしまった悲しい少年です。でも普段は明るくふるまっています。初登場時に「残念でした~、ついてま~す」って下品なジョーク飛ばすからねこの子。正直このセリフが来た時、なんで咎狗にはボイスコレクション機能がないんだって頭抱えました。

 

アキラが珍しく攻め。

正直めっちゃ萌えました。キャラ萌えというかシチュ萌え。だってリンてば、アキラを殺そうとして本気戦闘繰り広げた後にセックスするんだもん。

個人的な性癖の話になるのですが、BLの醍醐味のひとつに「拳を交えた相手とセックスできる」っていうのがあると思うんです。男女だとやっぱり、物理的な力の差があるじゃないですか。女戦士とかを除いて、男女で本気の殺し合いってなかなか難しい。

でも男同士は違います。体一つで殺し合いが出来る。殺意という激情に身体を委ね、そのままぶつかり合うことができる。そしてセックスも本質は同じです、性欲に身を任せて、相手にぶつかっていく行為です。BLはこれを同時展開できるのがすごいと思うんです。殴り合って、セックスして、身体も心をぶつかり合って。そうしてはじめてお互いの深いところまで理解できるなんて、ロマンじゃないですか。

リンルートは、殺し合いとセックスが同じ世界軸で展開されるので最高でした。もちろん他ルートにもそういう側面はあるのですが、ケイスケはラインでイっちゃってるし、シキは力が圧倒的過ぎて対等な感じがしないので、ちょっとこの議論とは別の萌えかな。

暴力が一番琴線に触れた、リンルートでした。

 

そういえば、シキルートでリンが殺されるのが可哀想でした。シキ様大好きだけど、リン不憫……。全員幸せになれるルートがないのも咎狗のシビアで面白いところかも。

 

 

■源泉

初登場時、反射的に「攻略したい!!」と思ったのですが普通に攻略対象で思わずガッツポーズ。ただ攻めだったのが意外でした。咎狗発売当時オッサンは攻めになることが多かったのかな? 長らく商業BL沼にいたせいで「おっさんは受け」という偏見が刷り込まれてました(それはそれでどうなんだ)。でも源泉攻めも結構おいしかったです。

気のいい情報屋のオッサンです。アキラを息子に重ね合わせるくらいの年齢。セックスしたあともアキラに「おっさん」って呼ばれててちょっと可哀想でした。もとみって呼んでやれよ……。確かに読みにくいけどさ。

源泉に対するときのアキラは子供っぽくてかわいかったです。達観しているようでいて、アキラも10代の男の子なんだな~とニヤニヤしてしまいました。源泉にからかわれて食って掛かっていく様子とか、もろティーン。かわいいなぁ。

一方で、源泉がアキラに対して欲を抱いていると自覚するシーンもめっちゃ最高でした。いつも飄々としてる大人の男が、性欲を前にして余裕なくすのほんとエロくて好きです。

まぁそんなわけで大人なので、このルートが一番安心して読めました。アキラが一番幸せになれたのもこのルートなんじゃないかなって思います。源泉の包容力すごいし、なんかプロポーズしてるし。

 

 

■シキ

シキ様~~~~~~~!!!あなたに出会えた瞬間、「あ、このゲーム買ってよかった」と思いました最高です。紅い瞳、絶対強者、声帯グリリバ、日本刀。あふれ出る強キャラ感がもうレジェンド。

冷血に見えるシキだけど、彼にも薄味ながら愛情はあります。だってリンを殺した後、シキはアキラにキスをするんです。彼ほどの人間でも兄弟を殺せば動揺するんだな、と思ったら胸がキュッとなりました。

そして彼はちゃんと人間なのです。シキがイグラを開催したのは自分の弱さに打ち勝つため。エゴの塊たるその行為は決して許されるものではないけれど、シキがnの喉笛に噛みついたとき、あぁ、この人も人間なんだなって、切ない気持ちになりました。

 

シキのエンドは全部で3つあるんですが、全部良かったです。1つずつ見ていきます。

 

①シキ放心エンド

シキが光を失うエンドです。nを倒すことで人生の目的を果たすものの、「君の負けだ」というnの台詞がきっと彼を蝕んだのでしょう、やがて彼は気力をなくしていき、最後には車いす生活を送ります。

他のエンドと違って、アキラがシキを守っているのが良かったです。切なくて優しいエンドだな、と思いました。

 

②バディエンド

ニホン統一直後にシキがクーデターを起こし、ニホンのトップに君臨するエンドです。アキラはシキの側近、国のNo.2になっています。

私はこのエンドが一番好きです。2人は独裁国家の絶対強者。シキとアキラが軍服を着て並んでいるスチル、性癖にぶちささりました。

このエンドでシキは「世界の覇者となる」と言い、シナリオは「シキにはそれを実現しうるカリスマ性がある」的なことを語るんですが、個人的にそれは無理だと思います。シキ達がやっているのは恐怖政治なので、必ずどこかで破滅する。シキの統治するニホンは潰れる、それは避けられない未来なのだと思うんです。

けれどいつか訪れるその瞬間も、シキとアキラは手を握り合っているのでしょうね。最強のバディ、誰より信頼する相手。何者も切ることが出来ない強い絆が感じられるので、本当に美しいエンドだと思いました。(ここまで妄想)

 

③性奴隷エンド

シキがトシマのトップになり、アキラが彼の性奴隷になるエンドです。ん~、なんとなく奴隷と書いたけど、愛人というほうが近いかも。

このエンドのアキラ、完全にイっちゃってます。城内の誰もがアキラの色気に充てられるほどエロスの権化になってます。しかも本人もそれを自覚していて、あえていろんな人を誘ってセックスして、シキにおしおきされるのを楽しんでいる始末。

一番退廃的なエンドでした。たぶん分類的にはBADENDなのでしょうが、私的にはGOODENDでした。性癖。

 

 

■n

ナノのことを救えたのは、同じ境遇に置かれたアキラだけだったんでしょうね。エマも彼を救おうとしたけど、それはきっと間違ったやり方だった。

感情を失ってしまった彼は本当につかみどころがなくて、あんまり感情移入もできなかったかも。でもナノに肩入れするアキラの気持ちは分かりました。研究機関にからだをいじられ、望まぬまま呪われた血を宿してしまった者同士、寄り添いたかったのでしょうね。

できるなら、ナノとエマの前日譚が読みたいです。なんならグエン視点でも可。グエン→エマ→ナノっていう構図、正直たぎったからさ。咎狗は結構いろいろ展開してるらしいけど、公式からそういうSS出てないのかなぁ。

 

 

***

 

 

咎狗、楽しかったです。

作画崩壊で有名なアニメもいつか見てみたいなぁ。